全海運について
あらまし
創 立 昭和12年10月
設 立 昭和33年10月
所 在 地
〒102-0093 東京都千代田区平河町 2-6-4 海運ビル7階
TEL : 03-3288-8140 FAX : 03-3288-8144
会 員 直接(会員)組合:18 間接組合:26 支部:9 合計:53
事業者数 所属事業者数(休業者数含まない) 1,346者(令和6年4月1日現在)
船 腹 量 1,723隻 1,376,900総トン 2,716,708重量トン(令和6年4月1日現在)
役 員 理事42名、監事2名、計44名(令和6年6月19日現在)
理事のうち 会長1名、副会長4名
事業
令和5年度事業の概況
我が国経済は、コロナ禍の影響により大幅に景気が落ち込んだ後、令和5年5月、新型コロナ感染症法上の位置付けが5類感染症に移行したことによる国内需要の高まり及び円安を背景としたインバウンド需要の影響等により、徐々に経済社会活動の正常化が進みつつある。しかしながら、長引くロシアによるウクライナ軍事侵攻に加え、イスラエル・ハマス紛争が激化する等世界情勢が混沌とする中、世界的なエネルギー・食料価格の物価上昇や円安傾向にも歯止めがかからず、我が国においても40年ぶりの物価上昇など日本経済や国民生活に深刻な影響を与えた。そのうえ、物価高による消費下押しと人手不足による企業の設備投資の遅延に加え、令和6年元日に発生した能登半島地震の被災地支援も新たに必要となり、景気回復が足踏みをしている状況下にある。
内航海運業界では、令和3年8月に暫定措置事業が終了し、自由なタイミングで船舶建造ができるようにはなったが、令和5年3月末現在の内航船腹量の船齢別構成をみると、船齢14年以上の老齢船は、隻数比68.8%、総トン数比は50.9%を占めている。船齢別平均船型についても、14年未満が1,000総トンを超えているものに対し、14年以上の老齢船が659総トンとなっており、小型船ほど老齢化が進んでいるのが現状である。内航船の老齢船比率が約7割という状況下、代替建造の促進を求めていかなければならないにもかかわらず、依然進まない要因として、運賃・用船料が思うように改善しない状況に加えて、人手不足や働き方改革に伴う人件費の上昇、鋼材価格の高騰などで船価が上昇したことによる船主の建造意欲の低下が考えられる。総連合会実施の令和4年度定期用船料調査結果によると、希望する用船料と現状の用船料との比較では、ほぼすべての船型がマイナスとなっており、変わらず現状と希望が乖離している状況にある。
一方、内航船員の年齢構成については、50歳以上が5割を超え高齢化が進んでおり、令和4年10月時点で内航船員数は、21,092名であり、昨年比410名の減員となった。平成26年から令和3年まで8年間船員数は増加していたが、ここにきて減少に転じており、減員410名の内、約320名の年齢が50歳以上であることから、内航船員の高齢者退職の段階にあることがうかがえる。船舶の高齢化と船員の高齢化、この二つの高齢化が内航海運の喫緊の課題となっており、安全・安定輸送を目指すには、厳しい環境下に於いても運賃・用船料の改善を推進していくことが不可欠であり重要な命題となっている。コンプライアンスや環境問題に対する意識が強まっている昨今、内航船の安全運航の確保には自らの製品等を運ぶ荷主にも関与が求められる状況にあることから、荷主、船主、オペレーター等関係者が、一丸となって危機意識を共有していかなければならない。
今後の船員確保・育成対策に資するため、当連合会は総連合会と協力し、商船系高等専門学校生を対象とした3級海技士の養成及び海技教育機構の学生を対象とした4級海技士の養成並びに水産系高校の学生を対象とした4級・5級海技士の養成についても対策支援を行った。多様な人材が内航海運へ導入されるよう、船員養成機関卒業生以外の一般社会人からの内航船員への採用を促進する為、海洋共育センターが実施する民間完結型6級海技士(航海・機関)養成課程等の効率的な運用等を当連合会も全面的に支援しており、将来を見据えた対応を図っている。令和5年10月に設立された「6級海技士養成奨学金制度」については、関係団体と密接な連携を取りつつ、広く活用し、養成者数の拡大を目指す。さらに、平成30年8月より実施の「船員育成船舶認定制度」については、内航海運事業者にとって有益な取り組みであることから、同制度の活用を推進し、船員の確保・育成に努めている。
令和5年度実施の内航貨物船員計画雇用促進助成制度では、当連合会に於いては、9者18名を対象に約353万円が交付され、若年船員育成への支援を行った。
又、船員の働き方改革に伴い、改正法の施行により、船舶所有者に船員の労働時間を管理する「労務管理責任者」を選任する義務が課せられたことから、「労務管理責任者講習」を令和4年度に引き続き、令和5年度も以下の通り実施した。全国3か所で実施、221人が受講し、内当連合会所属事業者は109人であった。尚、令和5年4月には労働時間規制の例外についての船員法等の改正が施行され、労働時間の上限(14時間/日、72時間/週)や休息時間規制が遵守できるよう労務管理記録簿の記載等に特化した「労務管理記録簿実務講習」を以下の通り実施した。全国3か所で実施、183人が受講し、内当連合会所属の事業者は83人であった。又、船員の健康確保に関する制度が令和5年4月に施行され、令和元年6月に改正された労働施策総合推進法(パワハラ防止法)により、令和4年4月からは全事業者に対し、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けされたことから、「健康管理・ハラスメント・助成金セミナー」を以下の通り実施した。全国6か所で実施、142人が受講し、内当連合会所属事業者は44人であった。
STCW基本訓練対策については、組合員の船員向けの訓練実施について、日本船員雇用促進センター(SECOJ)と調整を行い、内航船員の訓練実施人数の拡大を目指し、空白地域の解消や訓練料金の低廉化のため、総連合会と共に当連合会はこれらを支援している。令和5年度実績は、全国3か所で実施、35人が受講した。
尚、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて、令和5年度においてもPCR検査等を実施した組合員に対し、その費用の一部に対し助成金を交付した。当連合会に於いては、35者を対象に約525万円が交付され、事業者負担軽減に大きく貢献した。
又、内航海運の安定的な船員確保育成を図ることを目的とした「船員確保チャレンジ事業」を実施し、各地域の内航船員確保対策協議会、5組合及び当連合会会員組合・支部等に支援することとした。令和5年度実績は、承認15件、内当連合会所属の申請者(内航船員確保対策協議会含む)は、9件であった。
以上のように当連合会は、組合員の要望・国の施策実施等多様な問題に対応し、理事会等の審議を通じて意見集約を図り、総連合会をはじめとする関係機関等への具申を行った。
以 上
事業計画
令和6年度事業計画
コロナ禍の脱却に伴い、我が国経済は、緩やかに回復しているものの、物価上昇による節約志向の高まりから個人消費は減少し、又、投資コストの増大から中小企業の設備投資等では足踏みがみられる。
一方、株価は空前の高値を付け、景気は上向いているとの見方もある中で、実態経済はインフレに賃上げが追い付かず、景気回復を実感できない状況にある。
内航海運の輸送動向に目を向けても、貨物船関連では、半導体の供給制約が解消され、自動車生産が回復、自動車輸送が顕著に推移したが、鉄鋼は建設需要等の低迷に伴い、輸送需要も低調に推移した。
斯様な中、今年度も引き続き、当連合会は総連合会と連携し、内航海運業界の発展に向けた持続可能な目標設定と諸施策の対応について、関係省庁や関係団体と連携して適切に取り組んでいく。
当連合会は、令和3年8月の暫定措置事業終了に伴い、新たな物流事業者団体として組織編成を図り、安全かつ安定輸送の確保を図る為に、船員確保対策、安定・効率化輸送の推進、内航海運事業者のコンプライアンスの向上を目指すとともに、暫定剰余金を活用した国の施策を推進する為、船員の確保育成と働き方改革、取引環境の改善及び生産性向上、環境対策の推進をメインとする施策に取り組むために必要な事業を実施する。
それらを実施するためには、代替建造の推進により船舶の近代化を図るとともに、若年船員の確保に向けて多岐にわたる人材発掘に全勢力を傾注する。
船員の働き方改革推進に向けて、労働環境と運賃用船料の改善が急務であることから、荷主企業の理解を得るべく、契約の適正化等、内航海運業界が一丸となって、その改善に取り組まなければならない。
又、令和4年4月海事産業強化法施行に伴い、令和5年度より船員の健康確保等の措置も実施され、船員の働き方改革が本格的に行われることから、その実施に必要な事業を当連合会は総連合会と協力し行うとともに、2030年CO₂排出削減目標の達成に向けて内航海運業界として、連携型省エネ船の開発と普及、バイオ燃料の活用等による省エネ・省CO₂に取り組んでいく。
さらに、令和6年度からは、働き方関連法によって4月以降自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることから、トラックの輸送力不足が危惧されており、内航海運業界はその輸送の受け皿としての対応を政府や関係団体と連携して取り組んでいく。
尚、カボタージュ制度は、国の安全保障と治安の確保、国内における産業、生活物資の安全かつ安定輸送の観点から国策上必要不可欠のものであり、引き続きカボタージュ制度の下で安定輸送を維持する為にも、若年船員の確保育成に必要な対応を取る一方で、外国人船員の雇用については、慎重な検討を要するが、その導入を望む声もある。
又、当連合会では、現在、ホームページを運用、及びメールでの周知徹底を実施しており、広く組合員への情報伝達を図る一方で、その情報量が多い故、重要な情報が埋もれてしまう可能性も考えられるため、受信者が分かりやすく理解できるような発信方法を工夫し、次世代を担う若者を含め、一般国民に対し内航海運への認識、理解を促進するため、LINE等のSNSを活用した情報発信に努めるとともに、働き方改革や各種コスト削減を意識し、WEB会議と対面式会議を併用しながら運用をしていく。
尚、その一例として、今後の当連合会会議では、会議資料を電子化することにより、各個人のPCやタブレット等からの閲覧を促進させ、ペーパーレス化及び事務局におけるコスト削減や事務業務効率化を図っていく。
内航海運業界を取り巻く課題山積の中、当連合会は、会員及び総連合会と連携しつつ、組合員の地位向上に資するべく下記事項達成に向け傾注する。
【記】
○運賃及び用船料の適正化推進
○若年船員の安定的な確保・育成と雇用促進
○内航海運暫定措置事業終了後の組合の組織及び事業等のあり方検討
○内航海運についての海事広報推進・充実
○カボタージュ制度の堅持・研究
○組合員等への情報伝達の推進及び業界発展に向けた諸施策の実施
○感染症拡大の防止及び激甚災害に向けた支援活動推進
会長メッセージ
組合員の皆様へ
年頭のご挨拶
全国海運組合連合会
会長 藏本 由紀夫

皆様 新年明けましておめでとうございます。
2025年 新しい年を穏やかにお迎えの事とお慶び申し上げます。
昨年は、元日の能登半島地震により、多くの方々が亡くなり、被災し、翌1月2日には被災地支援に向かう海上保安庁と日本航空の航空機衝突事故が羽田空港で発生、数名の方々が亡くなりました。
その後、能登半島では復興途上にある中、9月には記録的な豪雨により二重災害をもたらしました。
お亡くなりになられた方々へ哀悼の意を表し、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧と、皆様が安心して暮らせる日が来ることを心よりお祈り申し上げます。
一方で我が国経済については、昨年は、個人消費が物価上昇の影響を受けつつも底堅く推移し、雇用・所得環境は労働需給の引き締まりを背景に緩やかに改善致しました。また設備投資は、高水準の企業収益を背景に省力化やデジタル投資などを中心に増加したものの、住宅投資が住宅価格の上昇を受け弱い動きとなり、また、自動車メーカーの不正問題発覚に伴う生産停止が解除されたものの横ばいで推移しております。
世界に目を向けてみると、米国の大統領選や、中国の景気低迷に加え、ロシアとウクライナ戦争の長期化、イスラエルとパレスチナ対立、北朝鮮の動向など、国際社会の不安定化や円安進行を要因とした原燃料価格・資機材価格の高騰も加え、今後も世界経済の減速に影響するものと思われます。
斯様な中、我々内航海運業界においては、「働き方改革」と相まって、船員の高齢化や船員不足により、安定輸送に深刻な影響を与える事が懸念される中、国交省では、「海技人材のあり方に関する検討会」や「海技教育機構の中期的なあり方に関する検討会」など集中的に議論し、令和6年度末を目途に取り纏められる予定となっております。
また、取引環境の改善に向け、内航海運事業者と荷主企業との連携強化を図るために「安定・効率輸送協議会」で課題の共有や、中長期的視野に立った改善策に取り組むべき協議を、昨年に引き続き行っているところです。
更に、内航の船員不足問題については、内航総連、海洋共育センター及び海技教育財団が連携し、関係機関の協力の下、6級海技士短期養成講習に入学する者に対する奨学金制度が昨年4月以降開始されました。その影響もあり前年度の卒業者を大幅に上回る約1.7倍の148名が卒業し業界に輩出される予定であり、また、ジェンダーレスな視点による船員対策検討会を設置して、女性船員の拡充に向けた議論も行っているところでございます。
それ以外においても、自律運航船の開発と普及、DX化の推進や海上ブロードバンドへの対応、STCW基本訓練の受講に向けた環境整備、船員確保&育成に向けた広報の充実や内航総連実施のチャレンジ事業及び内航海運安定基金事業並びに全国の船員確保対策協議会の活動支援など、積極的に取り組んで参りました。
また、当連合会では「青年部WG」が次の10年、20年の内航海運を持続可能な産業とすべく、未来志向かつ大局的に自社ならびに業界をどのようにしていくのかを改めて考え、各地区別に発表すると共に、全国の青年経営者との懇親を深めました。
更に、「将来の組織運営を考えるWG」においては、1年間の議論を報告書に纏め理事会に提出するなど、中長期的に持続可能な組合運営のあるべき姿に対しても活発に議論し、その環境整備を行って参りました。
業界の課題はまだまだ山積しておりますが、現状を踏まえた今後の対応を皆様と一緒に今年も考えていきたいと思っています。
2025年 乙巳(きのと・み)の年は、「再生や変化を繰り返しながら柔軟に発展していく」年になると言われており、皆様と協力しながら2025年を更なる発展の年にしていければ幸いです。
本年が皆様にとって明るくより良い年となりますことを念じて、今年も引き続き宜しくお願い致します。
2025年1月吉日